【目標】障害のある人がその人に合った福祉サービスを選択しつつ、地域社会の中で人々と共生し、その人らしく暮らせる環境を整備します。
■現状と課題
県内では、身体障害・知的障害・精神障害など、障害のある人が増加傾向にあります。
加えて、発達障害や高次脳機能障害、難病等に起因する障害がある人に対する福祉サービスの提供も必要とされています。
こうした中、県内約4,500人の施設入所者や精神科病院の長期入院者など障害のある人が身近な地域において日常生活や社会生活を営むため、地域社会での住まいの場としてのグループホームや日中活動の場の整備、相談支援体制の充実などが求められています。
また、障害のある人の就労については、経済的な自立だけではなく、社会参加や自己実現のためにも必要です。一般就労の促進や、福祉的就労の機会の提供などの就労支援だけではなく、職場への定着支援も課題となっています。
障害のある人自身や家族の高齢化が進む中で、親亡き後も障害のある人が地域社会の中で人々と共生し、その人らしく暮らせるよう、福祉サービスの充実や、自己決定・自己実現を支援することや、権利を擁護するための仕組みの充実が求められています。
一方、障害のある子どもも増加しており、早期発見によりライフステージを通じて一貫した質の高い療育支援が受けられる体制が求められています。
■取組の基本方向
障害のある人の地域社会でのくらしを支援するため、ライフステージや障害特性に合ったグループホーム等や日中活動の場の充実を図ります。また、就労のための福祉サービスの充実や、福祉サービス事業所を利用する障害者の工賃向上、一般就労の促進と定着支援を図るとともに、身近な地域における相談支援体制や療育支援体制の充実強化のための施策を推進します。
障害のある人の自己決定・自己実現を支援するとともに、障害のある人に対する理解を促進し、虐待防止や差別の解消、権利擁護、情報保障のための取組を推進し、ハード・ソフト両面の整備を進めます。
■主な取組
1 入所施設から地域生活への移行の推進
障害のある人の地域生活を支えるため、利用者のニーズに応じた多様な住まいの場として、グループホーム等の拡充を図るとともに、日中活動の場の充実も図ります。
強度行動障害のある人や医療的ケアが必要な人など、障害程度が重い人についても、できる限り地域で生活できるよう支援していくとともに、地域での支援が困難な障害のある人に対しては、入所施設の果たす役割が引き続き重要であることに留意しつつ、入所施設の有する人的資源や機能を地域生活のバックアップのために活用します。
また、障害のある人の中には単身での生活をしたいというニーズがあるため、グループホームのサテライト型住居の設置・活用など様々な支援に取り組みます。
袖ケ浦福祉センターについては、県立施設として被虐待児童のシェルター機能や強度行動障害支援等拠点としての機能・役割を果たすとともに、支援の在り方を大規模集団ケアから少人数を対象としたきめ細かなケアに転換するため、利用者の地域への移行を進めます。
・グループホームの整備促進・質的向上
・日中活動の場の充実
・地域生活を推進するための在宅サービスの充実
・重度・重複障害のある人等の地域生活移行の推進
・入所施設の有する人的資源や機能の活用

2 精神障害のある人の地域生活の推進
精神障害のある人が、地域の一員として安心して自分らしいくらしをすることができるようにするためには、医療機関による退院支援や地域の福祉関係機関による地域生活支援の両面が必要であることから、保健、医療、福祉関係者による「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進します。
また、精神障害のある人の地域生活への移行や地域生活を継続するための支援に積極的に取り組んでいる精神科病院を「千葉県精神障害者地域移行・地域定着病院」として認定し、精神科病院に長期入院している患者の退院を促進します。
さらに、精神障害のある人が、自立した生活を維持し、社会参加を支援するためのピアサポート体制を推進します。
・精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築
・千葉県精神障害者地域移行・地域定着病院の認定
・精神障害のある人が自らの体験をもとに相談支援等を行うピアサポートの推進
・精神科救急医療体制の充実
3 障害のある人への理解を広げ権利を擁護する取組の推進
「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」(以下「障害者条例」という。)に基づき、個別の差別事案の解決を図るとともに、差別の背景にある社会慣行などの問題について、様々な立場の関係者が参加する「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議」で協議し障害のある人に優しい取組を応援していきます。
また、障害者条例及び障害者差別解消法の趣旨が県民に広く浸透するよう周知を行います。
障害者虐待防止法に基づき、障害のある人への虐待の防止や早期発見・早期対応に向け、関係機関との連携強化、研修の実施、県民への普及啓発等に努めます。
また、地域における相談支援体制を構築し、生活支援と一体となった権利擁護の仕組みづくりのため、地域自立支援協議会の充実・強化への支援やネットワークづくりに取り組みます。
障害の有無にかかわらず必要な情報のやりとりやコミュニケーションが行えるよう支援を行います。平成29年3月に見直した「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」に基づく配慮に努めるとともに広くガイドラインを周知します。
平成28年6月制定の「千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例」に基づき、手話等の普及を促進するとともに、手話通訳者や点訳・朗読奉仕員などの人材の養成に取り組みます。
また、障害のある人に関するマークの県民への周知と理解の促進に取り組みます。
・障害のある人への理解の促進
・子どもたちへの福祉教育の推進
・地域における権利擁護体制の構築
・地域における相談支援体制の充実
・手話通訳者等の人材育成、手話等の普及促進
・情報・コミュニケーションバリアフリーのための普及啓発



4 障害のある子どもの療育支援体制の充実
障害のある子どもが、ライフステージを通じて一貫した療育支援を受けられるよう、関係機関の連携により、地域における療育支援体制の構築を図っていきます。
なお、医療的ケア児等の支援に関して、ニーズや地域資源の状況を踏まえ、保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進を図ります。また、手帳の有無や診断名等にかかわらず障害の可能性が見込まれる子どものために、障害児等療育支援事業を活用し相談支援体制の充実及び在宅障害児等やその家族の福祉の向上を図っていきます。
さらに、ホームヘルプや障害児通所支援、訪問看護などを通じて在宅支援機能の強化を図り、子どもの育ちと子育てを支える施策に取り組みます。特に放課後等デイサービスについては、発達支援を必要とする障害のある子どものニーズに的確に対応するため、事業所の支援の質の向上を図っていきます。
また、重症心身障害児(者)等が入院・入所する老朽化が進んだ千葉リハビリテーションセンターの整備の在り方について、引き続き検討してまいります。
・障害のある子どものライフステージを通じた一貫した療育支援体制の充実
・障害のある子どもと家族への在宅支援機能の強化
・地域における相談支援体制の充実(再掲)
・障害のある子どもへの医療・福祉サービスの充実
5 障害のある人の相談支援体制の充実
障害のある人の相談支援体制を支援するため、市町村が実施する相談研修会、自立支援協議会などに対して、アドバイザーを派遣します。
また、総合支援法のサービス等利用計画を作成する相談支援事業者の確保と質の向上を目指し、相談支援専門員の育成に係る各種の研修を行います。地域における相談支援の中核的な役割を担うことが期待される基幹相談支援センターについては、市町村にモデルを示し、その設置促進を支援します。
なお、障害のある子どもに係る相談については、手帳や診断名等にかかわらず障害の可能性が見込まれる子どものための相談支援体制の充実を図ります。
・地域における相談支援体制の充実(再掲)
・地域における相談支援従事者の研修の充実
・障害のある子どもと家族への在宅支援機能の強化(再掲)
6 障害のある人の一般就労の促進と福祉的就労の充実
障害者就労施設等は、障害のある人の経済的自立だけではなく、自己実現の場としても重要です。このため、障害のある人が可能な限り一般企業で就労するとともに、継続的な職業生活を維持できるよう、障害者福祉施設からの就労拡大をはじめとして、企業への支援や関係機関との連携などを含め、障害のある人の就職、職場定着、離職時フォローなどの支援などを進めます。
具体的には、障害者優先調達推進法に基づき、県の調達方針を策定するとともに、官公庁による優先調達の促進に向けて、市町村や県の各機関の職員向けに、調達事例の紹介や、制度の説明会を開催するなど、取組を進めます。
また、工賃向上計画に基づく就労支援事業の強化のための支援を行い、工賃の向上を図ります。
さらに、障害者就労施設への発注の拡大に向け、企業や自治体等からの発注に対応する共同受注窓口や、県内の就労施設等の情報をインターネットで提供する「チャレンジド・インフォ・千葉」等を通じて、受発注のマッチングを図っていきます。
・就労支援・定着支援の体制強化
・障害者就業・生活支援センターの運営(地域生活支援事業)強化
・障害のある人を雇用する企業等への支援
・支援機関や関係機関のネットワークの構築及び情報共有化
・福祉施設等で生産活動・福祉的就労を行う障害のある人の賃金向上への取組の推進
・障害のある人の自らの価値観に基づいた働き方の選択を尊重した支援

7 障害のある人一人ひとりに着目した支援の充実
発達障害、高次脳機能障害、強度行動障害のある人など、地域の支援施設・機関では通常の対応が難しい障害について、支援の拡充を図るとともに、より地域に密着した支援ができるよう、民間での専門的・広域的な支援拠点機関の普及促進や、そのための機関・人材育成などの具体的な仕組みづくりを進めます。
通所による施設サービスだけでは支援が困難な障害のある人に対しては、親の会、当事者サポート団体などと連携した支援などを進めます。ひきこもり本人や家族等に対しては、相談支援等により、ひきこもり本人の自立を推進し、本人及び家族等の福祉の増進を図ります。
また、特に本人や家族の負担が大きい重度の心身に障害のある人に対しては、市町村が実施する負担軽減のための医療費助成について、引き続き補助を行います。
・地域の支援施設等のみでは支援が困難な障害に対する支援の推進
・通所サービスだけでは支援が困難な障害に対する支援の推進
・障害のある子どもと家族への在宅支援機能の強化(再掲)
・重度・重複障害のある人の負担軽減の推進
・重度・重複障害のある人等の地域生活移行の推進(再掲)
・ひきこもりに対するアウトリーチ型支援の推進